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往診日記DIARY

10.仲人デビュー

 

 江戸時代、町医者の副業といえば『仲人』と言われるように、往診で家の事情に詳しい昔の町医者は『仲人』の適任だったようだ。患家とのつながりも深かったのであろう。

先日、ある患者さんの家族から相談を受けた。「訪問看護師のSさん、うちの息子の嫁に来てくれんかね〜」。はじめは冗談半分に聞いていたが、次第に本気であることに気付いた。Sさんはいわゆる美人ではないが、訪問看護師になるために生まれてきたような優しくて頼りがいのある人だ。2か月前からその患者さんの訪問看護を担当している。患者さん一家も明るくていい人ばかり。彼女が嫁としてその家におさまった姿を想像した。きっと『さざえさん』のような明るい家庭をつくることだろう。私は慣れないながら『仲人』役を買って出ることにした。

Sさんは天使みたいな人じゃのう」、患者さんは口癖のようにそう言った。聞いていて微笑ましくもあり、同時に一抹の不安を感じた。困ったときに親身に世話をしてくれる訪問看護師は、患者さんや家族にとってまさに天使のような存在だ。「ぜひうちの嫁に」と口説かれるのも当然のことだろう。ただ、仕事だからできること、仕事だから作れる笑顔だってきっとあるはず。そのあたりのことも患者さんにはしっかり理解してもらわないと・・・。まずは「インフォームド・コンセント」。私の中でSさんの嫁入りに向けた構想が次第に膨らんでいった。

ある日、Sさんにそれとなく話を持ちかけてみた。彼女は申し訳なさそうに「すでに2人の子持ちなんです・・・」。少し照れたその表情は確かに天使のようだった。きっとその笑顔に患者さんは救われるのだろうとあらためて感じた。私の『仲人』デビューは、こうしてあっけなく幕を閉じた。



 画 植田映一 尾道市向島在住

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