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往診日記DIARY

28.二度目の「復活」

昨年末のことである。70歳代の悪性腫瘍の患者さんが、かなり厳しい段階に入っていた。「あとどのくらいでしょうか」。家族からの質問に、私は「残念ですが、明日を迎えることは難しいと思います」と答えた。ところが、その患者さんは見事に「復活」を遂げ、何もなかったかのように半年が経過した。

そして1週間前、また同じ出来事が起こった。その日、呼吸は浅く、意識は薄れ、脈も触れない。「早く家族や親戚を集めてください」と娘さんに告げて、私は患家を後にした。夜中の看取りを覚悟して、電話を枕元に早々と休むことに。気が付いたら外はすでに明るくなっていた。あわてて電話の着信履歴をみたが、どこからもかかった形跡はない。気になって患家に電話を入れてみた。すると、意外にも娘さんの明るい声。「母は今、座って朝食を摂っています」。私が「遠方から駆け付けていただいた親戚の方に申し訳ない」と謝ると、「そんな気がしたので、今回はまだ誰にも連絡していないんです」と娘さん。私より、よほど読みが深い。

今日がその1週間後の定期往診の日。どんな顔をして患家を訪ねればいいのだろう。自分の見立てのまずさを恥ずべきか、それとも二度目の「復活」を素直に喜ぶべきか。患者さんはいつものように「お世話になります」。しんどそうではあるが、時に笑顔も覗かせた。帰り際に娘さんが玄関口まで見送ってくれた。私は二度にわたる「お騒がせ」を詫びた。

娘さんは「いいんです。年末、先生にあと数時間と言われて頭の中が真っ白になったけど、母といっしょに何とか半年頑張ることができました。今回もまた半年命をもらったような気がします。そのうち新薬が開発されて、母が元気に歩ける日が来るかもしれませんね」。患者さんの生命力と家族の愛情に脱帽。娘さんの夢が現実になることを願って、今では三度目の「復活」があってもいいのかなと思う。



 画 植田映一 尾道市向島在住

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