往診に伺うと、当然のことながら患者さんの横にご家族がいる。私たちがいくら頑張っても、在宅医療はご家族の力に負うところが大きい。亡くなった患者さんの顔を思い浮かべるとき、必ずと言っていいくらいご家族の顔が並ぶ。
福山で在宅専門クリニックを開設して3年。これまでにお見送りした患者さんが100名を越えた。私のクリニックと訪問看護ステーション、保険薬局などで作る在宅ケアチームでは、昨年からご遺族とスタッフとの集まり「こもれびの会」を始めた。大切な家族を失い、悲嘆と向き合ってきたご遺族。すでに峠を越えたという人もいれば、1年たっても人前に出ることができない人、心の傷を引きずりながら誰にも相談できず閉じこもりがちになっている人、毎日仏壇の前で涙している人・・・。それぞれ胸のうちを語り合った。ご遺族同士、先輩が後輩に寄り添う情景に木漏れ日のような温かさを感じた。
ご遺族の言葉は私たちにも振り返りの機会を与えてくれた。「医師や看護師の一言に励まされたり、逆に傷つけられたり」。思い当たることがなくもない。また、最期まで自宅で献身的にお世話されたあるご遺族から、「もっとしてあげられることがあったのでは」。スタッフとして達成感を感じていただけに、その言葉は私たちに重くのしかかった。ご家族の思いを私たちはどれくらい受けとめられているのだろうか。
医療現場では患者さんが亡くなった時点でご家族との関わりも終わる。闘病中にご家族がどんなことに悩み、遺族となってどんな悲嘆を経験するのか私たちはほとんど知らない。医療者として、ご遺族に接する機会が時に必要だと思う。
会の終り、音楽療法士の演奏に参加者の多くが目に涙を浮かべた。しかし、演奏が終わる頃、涙は自然に笑顔へと変わっていった。
今年もあとわずか。年が入れ替わることで、ご遺族の悲しみがいくらかでも和らいでいくことを願いたい。
画 植田映一 尾道市向島在住
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