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往診日記DIARY

38.おばあちゃんがくれたレジ袋

 
 今回の主役は、首都圏に住む80歳代の女性。数年前から少しずつ認知症が進み、今では家族の名前すら言い当てるのが難しくなっている。そのおばあちゃんの家を、久しぶりに孫娘が訪れた。新幹線を乗り継いで約6時間の長旅。今回は生まれたばかりのひ孫も一緒だ。残念ながら、おばあちゃんは孫娘が誰かわからず、はじめは戸惑った様子。それでもひ孫をあやすうちに馴染んできたらしく、孫娘の滞在中はいつになく楽しそうな表情を見せた。

数日後、孫娘が帰る日、朝からおばあちゃんはそわそわ。孫娘とひ孫に何かお土産をと家中を探索。本当はお小遣いを持たせたかったが、お金は家族に管理され自分の自由にならない。そこで、彼女が取り出したのは自分の紙おむつ。ひ孫にと思ったようだが、当然ながら「サイズが合わない」と反対され、次に持ってきたのはなぜかスーパーのレジ袋。伯母が申し訳なさそうに、「これなら荷物にならないので、おばあちゃんの気持ちだと思って持って帰ってあげて」。孫娘はそのレジ袋を大切にポケットに納め、おばあちゃんの家を後にした。

帰りの新幹線の車内。旅の疲れが出たのか、孫娘はいきなり吐き気に襲われた。片手に赤ん坊を抱きながら身動きが取れず、目の前は真っ白に。とっさに頭に浮かんだのがおばあちゃんからもらったレジ袋。おばあちゃんの気の利いた贈り物が孫娘の窮地を救った。

その孫娘、実は私の娘であり、おばあちゃんはレジ袋とともに洒落た土産話を我が家に届けてくれたのだった。

 画 植田映一 尾道市向島在住

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