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   在宅医療専門

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往診日記DIARY

7.遺影の中から

 

わたしたちが訪問するといつも満面の笑みで「お・か・え・り」と言ってくれた進行性神経疾患のおばあちゃんが、自宅で静かに息を引き取った。気管切開などの延命処置は一切望まれなかった。病院が嫌いで、出来るだけ家にいたいと言われていた。親思いの二人の娘さんと少しもの忘れが始まったおじいちゃん、そして愛猫からたっぷりの愛情を注がれ、最期まで笑顔を絶やさない素敵なおばあちゃんだった。帰り際に「今度いつ来ましょう」と問うと、ニコッとして「あ・し・た」と答えてくれる。おばあちゃんのおかげで、その家を訪問するスタッフはみんな笑顔になれた。

亡くなられてから約一カ月後、その患者さんのお宅でデスカンファランスが開催された。デスカンファランスは、事例を通して学んだことをチームで共有しこれからのケアに役立てていくもので、チーム医療を深めるうえでとても大切なカンファランスである。発症時から患者さんの治療にあたった神経内科医をはじめ、在宅ケアに関わった医療・介護スタッフが患者さん宅に集まった。ご家族も含めて約20名が参加する熱気にあふれたカンファランスとなった。ケアマネの進行でスタッフ全員が意見や感想を述べた。ご家族も熱心にディスカッションに加わった。患者さんも遺影の中から静かに見守ってくれた。そこには実に多くの学びがあった。振り返ると患者さんやご家族も普通にチームの一員だったし、患者さんが常にその中心に居てくれた。わたしたちが目指す『在宅医療チーム』の形がぼんやりながら見えてきたような気がした。参加者全員で感謝の黙とうを捧げてデスカンファランスは終了した。頭をかかえることの多い在宅診療のなかで、久しぶりにキラリと光る一日だった。

 

  画 植田映一 尾道市向島在住

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