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中国新聞連載


一人暮らしを支える

菓子パンの大好きなおばあちゃん。ヘルパーに支えられ何とか一人暮らしを続けている。このところ体力が弱り、大好きなパンさえも喉を通り難くなってきた。入退院の繰り返し。自宅での生活は、難しい段階に入っていた。そんなある日、食事を喉に詰まらせ緊急入院。幸い一命は取り留めた。

「家に帰りたい」という彼女の強い意向を受け、入院先の病院で話し合いが行われた。胃瘻や点滴は一切希望しない。口から食べることが彼女の一番の望み。「彼女らしい生活を応援したい」。それが私たちスタッフの共通した思いだった。

ところが、病状は予想以上に厳しいものだった。在宅で提供できる医療、介護サービスには限界がある。急変に対するヘルパーの不安も大きい。そして、家族は疎遠。この先、彼女が家で生活するにはあまりに課題が多すぎた。話し合いの結果は「入院の継続」。残念ながら、彼女の意向に沿うことが出来なかった。

ベッドに横たわる彼女が恨めしそうに指差した先には『絶食』と書かれた札。食べることが生きがいの彼女は「死んでもいいから家に連れて帰って」。涙ながらの訴えに私は返す言葉もなく、後ろ髪を強く引かれる思いで病院を後にした。

一人暮らしの患者さんから「最期を家で」と要望されることが増えてきた。『ひとり死』を望む声があがる一方で、『孤独死』が社会問題化している。一人暮らしの人が孤独を感じることなく、可能な限り住み慣れた家で、しかも安心して過ごせる社会。その実現に向けた道程はまだ遠い。現場の医療、介護スタッフだけでなく、住民や行政もいっしょになって取り組むべき地域の課題。まさに『地域力』が問われている。


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