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   在宅医療専門

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往診日記DIARY

14.看取りの場

 

 在宅医療の場は、患者さんの自宅だけでなく、ケアハウス、グループホームなど居住系施設も含め多岐にわたる。いま、その居住系施設に大きな波が押し寄せようとしている。「看取り」をめぐる問題である。

国民の多くは「できるだけ最期を自宅で過ごしたい」と望んでいるにもかかわらず、現在約8割が医療機関で最期を迎える。この傾向が続けば、10年先には亡くなる人々で病院が埋めつくされ、急性期医療が立ち行かなくなるとも言われている。終末期を安心して自宅で過ごすための支援体制が徐々に整備されてきているものの、自宅で看取られるケースはまだまだ限られる。そんな中、「第二の自宅」といわれる居住系施設に、新たな看取りの場として期待が寄せられているのだ。

ある高齢者施設で行われたカンファランスに参加した。肺炎などで入退院を繰り返している入居者の家族から「もう入院はさせたくない。施設でできるだけ苦痛のないように看取ってほしい。本人もそれを望んでいる」と申し出があった。担当スタッフを中心に活発な話し合いが行われた。終末期を人生の締めくくりの大切なステージとしてとらえ、その人らしく支援しようとするスタッフの姿勢が印象的だった。同時に、一人ひとりの入居者と最期まで向き合っていく「覚悟」のようなものが伝わってきた。施設を支えるスタッフの多くは介護職であり、医療面のサポートなど課題も多いものの、看取りに向けた機運は着実に醸成されていることを肌で感じ取ることができた。

急性期病院で行われるカンファランスでは「いかに治すか」に焦点が当てられ、「いかに看取るか」という問題はまず取り上げられない。そもそも病院というところは、結果的に看取ることはあっても、看取るための場所ではないのだ。病院で十分な治療を受け、それでも残念ながらその時が来たら、自分に合った味わい深い場所で、心おきなく人生を締めくくりたいものである。

 画 植田映一 尾道市向島在住

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