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往診日記DIARY

17.医療用麻薬とクルマの運転

 「パッチ(医療用麻薬の一種)を使っていると運転できないのですか。それなら、パッチを止めたい」。ある男性患者から医療用麻薬とクルマの運転について相談を受けた。

抗がん剤による治療が一段落、幸いパッチの使用で痛みは感じない。出来るだけ早く本来の生活を取り戻したい。まずは仕事への復帰。そして、夏休みには家族を連れて旅行に出かけたい。彼は、自らハンドルを握ることにこだわった。

緩和医療の普及に伴い、医療用麻薬が早い段階から広く使われるようになった。痛みを伴うがん患者にとっては大きな福音である。痛みが軽くなれば、気持ちは自然に「生活」へと向いていく。仕事、買い物、通院、子供の送迎、旅行・・・。そこで問題になるのがクルマの運転だ。わが国では、医療用麻薬に限らず、薬物の影響などで正常な運転ができない恐れのある状態での車両の運転は、法令上認められていない。

以前、ある女性患者が医療用麻薬の調整により、見違えるほど元気になって退院した。腹水で臨月のようなお腹を抱えながらも、「いまは全く痛みがないんです。今日は娘を学校まで迎えに行って、ユニクロで服を買って帰りました。生きてるって感じがしました」。残された時間を意識しながら、精一杯生きている彼女の小さな感動は大切にしたいと思った。

患者のQOL(生活の質)と安全、そして法令、それらのバランスを探ることは容易でない。その人の考え方や立場によっても見解は異なるだろう。男性患者からの相談を、ひとまず宿題とさせてもらった。まだ「答え」は見つかっていない。大事なのは「答え」よりも「きめ細かな説明」だろうと思う。

 画 植田映一 尾道市向島在住

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