「家族に苦労をかけて申し訳ない」。自宅で療養する多くの患者さんが一度は口にする言葉だ。家族の介護負担は、患者さんが在宅療養を断念する大きな理由のひとつであり、在宅スタッフもそこに無力さを感じずにはいられない。
『治す医療』から『支える医療』へ。このキャッチフレーズで在宅クリニックをオープンして2年が過ぎた。行く先々でこのフレーズを口にしていると、つい自分たちが在宅患者さんを支えているような錯覚に陥ってしまう。実際に患者さんを支えているのは多くの場合家族であり、私たち在宅スタッフは少し手を貸しているに過ぎないのだ。
ある難病患者さんの表情が、最近どうもさえない。往診の際、患者さんに何気なくそのことを尋ねてみた。彼は、文字盤に「○○、○○、○○」と3人の家族の名前を指差し、「迷惑をかけるのが辛い」と涙した。私は返す言葉が見つからなかった。私たちに出来るのは、ただ見守り、寄り添うことだけ。快方に向かうことのない病状、医療機器によって生かされている現実・・・。そんな患者さんを支え続ける家族の存在はあまりに大きく、その負担も半端ではない。
在宅医療において、家族をサポートすることはとても大切だ。ところが、当然ながら私たちに家族の代役は務まらないし、それぞれの家には私たちが踏み込んではならない『家庭』がある。スタッフとして何ができて何ができないかを考え、家族といっしょになって『支える医療』を提供できればいいと思う。
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