この時期、往診先で患者さんが年賀状を書いている場面に出合うことがある。驚くほど達筆だったり、絵が上手だったり・・・。患者さんの意外な一面を発見することもしばしば。
昨年の今頃、ある60歳代の末期がんの患者さんが微笑みながら私に言った。「この世にいない人から年賀状が届いたら、先生はどう思いますか」。彼女の病状がわかるだけに、私は答えに窮した。「正月から縁起が悪いと言われるかもしれないけれど、感謝の気持ちを込めて出来るだけ多くの人に年賀状を書こうと思います」と彼女。
今年の正月、彼女からの年賀状が届いた。私の人生で初めていただいた「この世にいない人からの年賀状」。年賀状というより、礼状のような内容だった。ペンを持つのがやっとだったのだろう。字は大きく揺れていた。その年賀状が、この1年、私を励ましてくれた。
この頃、患者さんの家族から「年を越せますか」との質問をよく受ける。遠慮がちに「年賀状を送ってもいいものでしょうか」とたずねられることもある。私自身、年賀状に向かいながら、この1年を無事過ごせたことに感謝。
早いもので今年もあとわずかとなった。「最後の正月を家で過ごしたい」と病院から家に帰ってくる患者さんが増える。「在宅」が賑わう時期だ。多くの患者さんとその家族に、いいお正月が訪れることを願う。
画 植田映一 尾道市向島在住
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