おばあちゃんとネコ
テレビアニメ『サザエさん』にタマがいなかったら・・・。そんな光景は考えられないし、考えたくもない。タマは磯野家の立派な一員だ。タマに限らずペットは私たちの生活に彩りや潤いを与えてくれる。最期までペットと過ごしたい、そのために在宅医療を選択する患者さんも少なくない。
人家が途絶えて、さらに細い道を奥に進んだところにある一軒家。そこに神経難病を患うおばあちゃんがいた。病気が進行するにつれ食事や会話が難しくなり、息苦しさも増していった。それでも私たちが訪問すると、いつも満面の笑みで「お・か・え・り」と迎えてくれた。そして帰り際に「今度いつ来ましょう」と問うと、またニコッとして「あ・し・た」と答えてくれる。その何気ないやりとりに私たちも癒された。親思いの二人の娘さんと少しもの忘れが始まったおじいちゃん、そして愛猫からたっぷりの愛情を注がれ、笑顔を絶やさない素敵なおばあちゃん。その家を訪れるスタッフは皆温かな気持ちになれた。病院は大嫌い。最期まで家で過ごしたい。それがおばあちゃんの望みだった。
その家のネコが、タマ顔負けのいい役柄をこなした。診察のときはいつもおばあちゃんの傍にいて、私たちが痛いことでもしようものなら噛みつく勢い。病状説明にも心配そうに耳を傾けてくれる。辛い話におばあちゃんが涙すると、ネコの表情も心なしか曇った。無駄口をたたくでもなく、静かにおばあちゃんの話し相手になってくれる。きっと大きな心の支えとなったに違いない。
おばあちゃんが息を引き取る時、ネコは家族と同じ輪の中にいた。家族の一員であり、そして私たちにとっては頼りになるチームの一員だったように思う。
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