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   在宅医療専門

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中国新聞連載


あるおしどり夫婦の話

80歳代のおしどり夫婦がいた。妻のほうががんを患い、すでに終末期。夫も足腰が弱く、自分のことで精いっぱい。高齢の二人暮らしは限界と思われた。妻の病状が進み、当然入院だろうと高を括っていたところ、妻は「家にいたい」。夫も涙ながらに「できるものなら、家で看てやりたい」。大変なことになったと思った。

夫は大のお酒好き。毎日、朝からちびりちびり。頬を染めながら妻のオムツを取り換える。歩くのもおぼつかず、介護しながらよく転んだ。夫のほうが先に逝きはしないかと気をもんだが、訪問看護師やヘルパーの支援を受け、立派に自宅で妻を看取った。

それから間もなく、夫は転倒を機にほぼ寝たきりに。肺炎などで入退院を繰り返した。病院では好きなお酒が飲めない。自宅での生活も思うにまかせず。妻を失い一人暮らしとなった彼が、私たちには痛々しく感じられた。

そんなある日、私は彼の自宅を訪ねてみた。彼は私に「ありがとう」。妻を介護した当時を振り返り、「家で看れてほんとによかった」。大変だったけれど、妻と苦しみを共にした貴重な経験がいまの彼を支えているという。妻とつながっている安心感、夫としての役割を果たした充実感・・・。涙を流しながらも、その表情は穏やかだった。

それからしばらくして、彼のもとに朗報が。彼にピッタリの介護施設が見つかったのだ。今また、大好きなお酒を朝からちびりちびり。彼らしい生活が戻って来た。スタッフからも可愛がられ、本来の笑顔が見られるようになった

在宅介護は家族にそれなりの負担を強いる。しかし、「家で看る」ことによって家族が得るものも少なくないように思う。


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